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2015年11月18日

第74回日本矯正歯科学会大会開催

「矯正歯科医療の潮流と未来への展望」をテーマに

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 さる11月18日(水)から20日(金)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)において、第74回日本矯正歯科学会大会(石川博之理事長・大会長)が「矯正歯科医療の潮流と未来への展望」をテーマに開催され、4,669名の参加者を迎えた。

 臨床セミナー「成長期の矯正治療を再考する」(嘉ノ海龍三氏、黒江和斗氏)、「バイオメカニクスを考慮した効率的な歯の移動メカニクスの提案」(陶山 肇氏、Paik Cheol –ho氏、吉田教明氏)や、シンポジウム「東アジアにおける矯正歯科医療の潮流と未来への展望」(Kim Seong-hun氏、Eric Liou氏、小野卓史氏、Yanheng Zhou氏)、「先端技術の歯科医療への応用と展望」(佐藤博信氏、中山功一氏、槇宏太郎氏、磯部総一郎氏)が行われ、大勢の聴講者がつめかけてホールは立ち見が大勢出る盛況ぶりであった。

 そのなかの1つのシンポジウム1で小野卓史氏(医歯大大学院咬合機能矯正学分野教授)は「近未来を少子化・高齢化をみすえたエビデンスに基づく矯正歯科治療戦略」と題して講演。機能面からみた早期治療の意義と、歯根完成歯の自家歯牙移植について解説した。小野氏は、「小児期に鼻呼吸を獲得することが大事で、口呼吸でいると睡眠時無呼吸障害になりやすい」としたうえで、「睡眠時無呼吸障害で酸素が薄い状態でいると、記憶の障害を受けることなどが動物実験で証明されている。これらを防ぐためには、矯正歯科医が早期治療で介入して歯列の異常を除去して正常な成長を見守ることで、頭蓋・顔面の成長を促すことが必要となってくる」と述べた。

 つぎに、小野氏の医局では歯根完成歯の自家歯牙移植を積極的に行っていることについて触れ、「自家歯牙移植の失敗となる原因の1つにアンキローシスがある」と述べた。移植後しばらく歯根膜組織の再付着・治癒を待つために、力をかけないのが通法とされているが、長期に力を与えなければ、移植歯の歯根膜が萎縮してしまい、アンキローシスを起こしやすくなってしまうため、アンキローシスを防ぐ方法についてわかりやすく解説した。ドナー歯にふさわしい条件として、単根歯で、歯根膜の量・厚みが減少していない咬合接触がある歯を挙げた。つぎに、移植した歯には矯正用アーチワイヤー(improved super elastic Ni-Ti alloy wire)でコントロールされた矯正力を加え、歯根膜の萎縮を防ぐことを強調し、移植してから7日目から力を加えるとよい結果が得られることを小野氏の研究で示した。
 小野氏の研究では、高齢者だからといって自家歯牙移植の成功率が下がるといった関連性は認められなかったため、「矯正力を生かした自家歯牙移植を高齢社会に生かそう」と提言して講演を結んだ。