2025年9月号掲載
第8回 かかりつけ歯科医の理想と現実(後編)
※本記事は、「新聞クイント 2025年9月号」より抜粋して掲載。
超高齢社会における歯科診療
現在、わが国の100歳以上の人口は年々増加し、2024年9月時点で95,000人を超えている(図1)。いずれの歯科医院でも超高齢者の訪問診療の依頼がきて不思議はない。筆者の経験上、その依頼の多くは義歯の不調であるため、義歯の新製や調整など、訪問診療での対応ができるよう準備しておく必要がある。後編では、訪問診療で経験した内容や一般開業歯科医としての心構えなど、私の考えについて述べてみたい。
初回来院時80代女性の患者さんは、ごく普通に歯周病の管理や義歯の調整を行っていた。長いお付き合いのなかで徐々に家族が付き添われるようになり、段々と会話も少なくなってきたと感じていたなか、いつの間にか100歳を超えておられた。その後、車椅子で来られるようになり、ついに通院困難ということで訪問診療を開始した。幸い、それまで口腔内は非常に良好に管理できていて、車椅子に座って少しの時間口を開けているだけで済むので、毎月の訪問を楽しみにされていた。何より家族にとても喜んでいただけたことが印象に残っている。103歳の天寿をまっとうされるまで、毎回感謝の言葉をいただいた(図2)。