日本歯科医学会の「顔」

2021年8月号掲載

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2021年8月号掲載

日本歯科医学会の「顔」

同じところに留まり続けるのではなく、つねに進化し続けたい

 2013年に日本歯科医学会会長に就任後、(一社)日本歯科医学会連合や日本歯科専門医機構の創設、歯科新病名の保険収載などに携わり、歯科界の先を見据えた基盤づくりを続けてきた住友雅人氏。Withコロナのなかでこのたび5期目を迎えた今、歯科学術団体のトップはどのような航海図を描き、目的地を目指すのか――。

住友:当学会会長として5期目となり、引き続き2年間の舵取りをさせていただくこととなりました。本来であれば、新型コロナウイルス感染症との闘いがなければ静かに学会を離れる気持ちでいました。しかし、現在は人類の命を狙うコロナウイルスとの闘いの真っただ中ですので、歯科界としてはこれまでの英知を結集して人類のために闘っていかなければなりません。私の役目はこれまで取り組んできた事業を整理し、いわゆる社会実装が望める環境を整備すること、AIを駆使した次世代のアイデア創生の場を提供することと考えています。

 大きな変革が求められている時代に立ち会えているのはある意味幸せなことです。私は昭和19年生まれの後期高齢者という立場ではありますが、逆に古い感性を強みとして新しい感性の方々とも協力し、これからの活動を見守りながら会務を進めていこうと心しています。

 さて、本学会の一大イベントである第24回日本歯科医学会学術大会(9月23日~25日)は、2020年初頭からのコロナウイルスの感染拡大により、全面オンライン開催を決断しました。併催の日本デンタルショーは2022年3月に延期という結果になったことは非常に残念ではありますが、私は本学術大会を契機に、多くの学会会員ならびに歯科医療関係者が歯科の方向性を認識し、社会に歯科医学や歯科医療の存在意義を強くアピールすることで、歯科界を活性化するという目標達成は完遂できると思っています。大会テーマは「逆転の発想 歯科界2040年への挑戦」ですが、この大会準備の試練は、まさに「逆転の発想 歯科界2021年への挑戦」でしょう。

 これまでのストラテジーではブレイクスルーは起こりません。発想の転換やパラダイムシフトのレベルよりももっと大きな挑戦が必要です。「逆転の発想」とは、従来では思いもよらない構想、ときには非常識ともいえる大胆な行動、人を動かすカリスマ性など、さまざまなストラテジーです。それらを駆使して「元気な歯科界」を創生し、その活力をもって健康寿命の延伸というこれからもっとも望まれる社会貢献を目指します。そのためには、歯科的手段を医療の中に投入し、社会全体のあらゆる英知と連携して具体的な成果を示すことが求められます。

 歯科界は、その目的をはっきり具現化することが歯科界活性化の大きな展開につながると思っていますし、「住する所なきを、まず花と知るべし(世阿弥:風姿花伝)」とあるように、学会も同じところに留まり続けるのではなく、つねに進化し続けることこそ大切です。