2024年5月号掲載
口と、からだと、生涯を診る歯科医師へ。
【PR】患者さんの訴えからその病態に至るまでの道のりを探る歯科臨床メソッドを学ぶ
※本記事は、「新聞クイント 2024年5月号」より抜粋して掲載。
咬合と口腔機能・態癖・力の関係を探り、歯科でできる治療法を長年にわたり追究してきた筒井照子氏。このたび、氏の提唱するメソッドを継承・実践し、さまざまな症状の改善に挑む33名の歯科医師による60症例から成る書籍『口腔機能障害のリハビリテーション臨床マニュアル』が発刊されました。編著者の筒井氏に、患者さんを包括的に診る歯科臨床と本書の見どころについて語っていただきました。(編集部)
歯科で診る範疇は、歯科医療の発展とともに変わってきている
かつて日本では、国民の多くがう蝕や歯周病に苦しんでいました。その時代に歯科臨床に携わった者ならば、来院する患者さんの多さや口腔内のすさまじさをよく知っているはずです。私たちは主に歯を修復し、予防を伝えることで患者さんの口を支えてきました。それから何十年もの時を経て、永久歯列におけるう蝕ゼロの子どもが多数派となり、8020運動の調査で残存歯の多い高齢者が増え続けているのを見ると、歯科界が行ってきた国民健康への寄与と功績の大きさに驚嘆せざるを得ません。われわれ開業歯科医は日々の臨床をまじめにこなしているだけですが、こうした巨視的な観点でも歯科医療の力を実感することができます。
「ならば、もはや歯科医療が行うべきことはないのか?」という疑問には、だれもが「そうではない」と答えるでしょう。皆がそれぞれの持ち場で、歯科医療の意義を感じながら臨床に挑む、そんな日々を送っているはずです。
歯科医院には、「ものが噛みにくい」「舌がひりひりする」「顎が痛い」「顎関節から音がする」「口の中が狭くて息苦しい」などの不具合を訴える患者さんも来院します。現代においては、軟食の影響で中下顎面が脆弱化し、このような不定愁訴を訴える方は増加しているように思います。私たちは、歯のみならず中下顎面を扱う「口腔科医」です。このような患者さんたちを、「気のせいでは?」「心身症かも」と自分の専門と安易に切り離して考える、あるいは見限ってしまってもいいのだろうか? 私の包括歯科治療と口腔機能障害への取り組みはこうした疑問から始まり、これまで追究を続けてきた源泉となっています。
機能・態癖・力の観点から不具合をもたらすアンバランスを取り除く
私の主宰してきた筒井塾、咬合療法研究会、日本包括歯科臨床学会は、こうした患者さんの訴え(narrative)から関係がありそうな病態の可能性を探る、あるいは実際に検査を行うことで、現状に至る道のりを把握し解決を図る医療を実践しようと努力しています。生体の咬合を「壊れた原因を探し、取り除き、できるところまで自然治癒させる生理学的咬合」「自然治癒しない歯と歯列を元の形に戻す補綴学的咬合」の2つの理論からとらえ、患者さんの不具合を解決する方法を探っています。
特に力のアンバランスの問題は重要視しており、形態異常に起因する咬合の不調や態癖に起因する圧力は、短時間、あるいは長期間をかけて人の口腔をはじめとする全身の健康とバランスに不調をもたらすと考えています。こうした問題に対し、口腔内の表面的な解決のみに甘んじるのではなく、根本にある原因を取り除けば再発を防止することもできます。
包括的な歯科臨床、口腔機能障害改善のためにふれてほしい1冊
こうした包括的な歯科臨床は、主に私が提案した治療セオリーをベースにしていますが、セオリーに従って治療を行えば、だれでも咬合療法や口腔機能の改善を良好に行うことができる、この歯科臨床をより多くの方に実践してほしいということが、私のかねてよりの願いでした。
このたび上梓された『口腔機能障害のリハビリテーション臨床マニュアル』では、33名の先生がたから60症例を寄せていただき、実際に多くの歯科医師(口腔科医)がこの治療セオリーを実践し、患者さんの苦しみをなくすことに挑戦している姿を伝えています。本書はエビデンスを保証するものではないかもしれませんが、多くの経験が詰まっています。
医療はごく一部の者しかできないものであっては意味がありません。すでにこうした医療に挑戦されている先生方にも、まだそうした観点をもち合わせていないという先生方にも、本書をつうじて患者さんの人生の同伴者として力戦奮闘する私たちの姿から、口腔機能障害のリハビリテーションについての知識や技術を得ていただければ幸いに思います。
